『食品ロス』や『フードロス』という言葉を最近よく耳にするようになったと思われている方も多いのではないでしょうか?現在、日本のみならず世界では食品ロスから様々な問題に直面しています。食品ロスを減らそうという動きが国際的に増えてきています。
食品ロスとは!?
そもそも『食品ロス』とは何なのか?まだ食べられるのにもかかわらず捨てられてしまう食品のことをいいます。元々食べられない部分(魚の骨や種など)は含まれていません。日本語では『食品ロス』や『フードロス』という言葉で表されます。国連食糧農業機関(FAO)では、
- food loss:
小売業者、外食産業提供者、消費者を除く、チェーン内の食品供給業者による決定と行動に起因する食品の量または質の低下を指す
- food waste:
小売業者、外食産業提供者、および消費者による決定と行動に起因する食品の量または質の低下を指す
※1※2【出典】@FAO「Technical Platform on the Measurement and Reduction of Food Loss and Waste」http://www.fao.org/platform-food-loss-waste/en/
と定義されています。日本では『フードロス』という言葉を使うことが多いですが英語の『food loss』には外食産業提供者や消費者が含まれておらず日本語の『フードロス』の意味合いとは少し異なります。食品ロス全般を英語では『food loss and waste』と表記されていることが多いようです。
食品ロスが引き起こす問題
食品ロスは食料不足の原因となっているだけではなく、環境問題や地球資源の損失などあらゆる問題とつながっています。食品ロスは自国の問題だけではなく地球全体に関わる問題です。1人ひとりが地球に住む一員として食品ロスを削減していく取り組みをしていくことは、世界の貧困や環境問題を変えていくことにつながっています。
年間600万トンを廃棄する日本
令和3年4月に環境省・農林水産省より発表されたデータによると平成30年度の日本の食品ロス発生量は『食品廃棄物等』の発生量が約2531万トン、この内『食品ロス』は約600万トン※3と発表されました。ここ数年は少しずつ減少していますが、日本でもこれだけの食品ロスが発生しています。
「持続可能な開発目標」SDGsの1つの達成目標として2030年までに2000年度比で半減するという目標が掲げられており日本では489万トン※4まで減らすことを目標にしています。
※3【出典】「食品ロス量(平成30年度推計値)の公表」(農林水産省)https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/210427.html
※4【出典】「食品ロス削減関係参考資料」(消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_210309_0001.pdf
食品ロスが起こる原因
食品ロスは主に家庭から出る食品ロスと事業から出る食品ロスに分けられます。日本での食品ロス600万トン(平成30年度)※5のうち家庭系のものは276万トン、事業系のものは324万トン※6となっています。それぞれの原因を見ていきましょう。
家庭系の食品ロスの原因
ポイント
・食べ残し
調理したものを作りすぎや食べ残しにより捨ててしまう場合
・直接廃棄
買いすぎて食品が傷んでしまったり、冷蔵庫の中で気づかない間に消費期限切れとなってしまったり調理せずに捨ててしまう場合
・過剰除去
野菜や果物などの皮の剥きすぎ、茎など食べられる部分も取り除いてしまう場合
家庭での食品ロスを減らしていくためには、食べ切れる分の食材を購入すること、冷蔵庫の中の食品の量や賞味期限を定期的に確認すること、余ってしまったもので冷凍が可能な場合は冷凍保存をするなど毎日のちょっとした意識づけで減らしていくことができます。
事業系の食品ロスの原因
ポイント
・製造工程での印字ミスや規格外品などによるロス、返品
・食品メーカーや小売店の納品期限切れ、売れ残り
・レストランなど飲食店の仕込みロス、食べ残し
製造から消費者の手に渡るまで食品流通の中では、食品ロスが多く起こっています。過剰生産を控える、賞味期限の年月表示化や納品期限の緩和(3分の1ルールの見直し)等、商慣習を見直そうという動きが広がってきています。
※5※6【出典】「食品ロス量(平成30年度推計値)の公表」(農林水産省)https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/210427.html
世界の食品ロス問題
世界ではどうでしょうか?国際連合食糧農業機関(FAO)によると世界では、まだ食べられる食料が毎年13億トン※7も廃棄されています。これは世界の食料生産量の3分の1※8にあたります。せっかく生産した食料の3分の1を捨ててしまっているのです。
UNEPによるUNEP食品廃棄指数レポート2021による家庭での1年あたりの食品廃棄物量が多い10カ国は上記の図の通りです。日本は815万トンとなっており世界第4位となっています。(環境省発表のデータとは数字が異なっているようです。)上記にあげた10カ国の1年の家庭での食品廃棄量の数値と1人あたりの家庭での推定食品廃棄量です。
- 中国(9164万6213トン、1人当たり64kg)
- インド(6876万163トン、1人当たり50kg)
- 米国(1935万9951トン、1人当たり59kg)
- 日本(815万9891トン、1人当たり64kg)
- ドイツ(626万3775トン、1人当たり75kg)
- フランス(552万2358トン、1人当たり85kg)
- 英国(519万9825トン、1人当たり77kg)
- ロシア(486万8564トン、1人当たり33kg)
- スペイン(361万3954トン、1人当たり77kg)
- オーストラリア(256万3110トン、1人当たり102kg)
【出典:UNEP食品廃棄物指数レポート2021United Nations Environment Programme (2021). Food Waste Index Report 2021. Nairobi.https://www.unep.org/resources/report/unep-food-waste-index-report-2021をもとに作成】
食品ロスは家庭系と事業系に分けられますが、家庭での食品ロスも大きなウェイトを占めています。日本でも事業系よりは少ないですが、約半分は家庭系の食品ロスです。家庭で過剰に買い過ぎないように気をつけたり、毎日の食事を工夫し食品ロスを減らすことも大事な取り組みです。
※7※8【出典】©FAO 2011 「Global food losses and food waste 」page5 http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/suistainability/pdf/Global_Food_Losses_and_Food_Waste.pdf