世界の食料問題

人類の生活に欠かすことのできない「食」は、SDGsにおいても大きなテーマとなっています。食品ロスは、世界の食料問題や飢餓問題と密接に関わっています。

 

世界の飢餓問題

 

2021年7月に5つの国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)によって発表された「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」のレポートによると世界全体の飢餓に苦しむ人々は、最大8億1100万人と推計されました。世界人口の約10分の1※1にあたります。2019年のデータよりも急激に増えており新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるものと見られています。

 

※1【出典】FAO, IFAD, UNICEF, WFP and WHO. 2021. 「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」https://data.unicef.org/resources/sofi-2021/?q31cha8921=c34d51ptrjdeo03qlc30

世界の食べ物は不足しているの?

 

最大8億1100万人もの人が満足に食べ物を食べられない状況下に置かれていますが、世界の食べ物が足りないかというとそうではありません。世界の年間穀物消費量は2020年では27.4億トン※2となっており世界の人口78億7500万人(2021年4月)※3に平等に世界の穀物を分配したとすると27億トン÷78億人=346kg(一人あたりが年間穀物消費できる量)となります。一人あたりの年間の穀物の消費標準量は約180kgとされており、在庫や穀物以外の食べ物の生産量なども合わせると十分な食べ物があり決して足りないというわけではありません。世界の穀物消費量は、途上国の人口増加や所得水準の向上等に伴い増加傾向にありますが、生産量も同様に増加傾向にあります。

 

※2「穀物の生産量、消費量、期末在庫率の推移」 (農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_kakaku/(「World Agricultural Supply and Demand Estimates」「PS&D」を元に作成されたデータ)
※3「世界人口白書2021(The State of World Population 2021)」国連人口基金(UNFPA)
https://test-global-unfpa.pantheonsite.io/sites/default/files/pub-pdf/SoWP2021_Report_-_EN_web.3.21_0.pdf

食べるためではない穀物の生産

 

世界ではすべての人が十分に食べられるだけの穀物が生産されているのにも関わらず飢餓で苦しむ人たちが増えているのはどうしてなのでしょうか?その理由の1つとしては、世界の穀物生産量27億トン(2020年)のうち43%※4は人が食べるために使われていますが、それ以外は飼料やバイオ燃料など産業用に使われていることが挙げられます。6割近く食べるためではない用途に使われていることになるのです。

 

 

穀物は人間が食べるためだけではなく穀物の36%※5は家畜のえさとして使われています。農林水産省のデータによると牛肉1kgを作るのに穀物11kg、豚肉1kgに穀物7kg、鶏肉1kgに4kg、鶏卵1kgに3kgの穀物が必要※6と言われています。食生活の変化や人口増加、先進国の過剰生産、飽食などに伴いお肉や卵を食べる量も増加しており結果として飼料用の穀物の消費を増やしています。また食用や飼料用の消費も拡大している中バイオ燃料としての消費が高まっています。穀物価格の高騰が起こると主食を輸入に頼っている途上国では深刻な問題となります。

 

 

※4※5【出典】FAO. 2020 Food Outlook - Biannual Report on Global Food Markets: June 2020. Food Outlook, 1. Rome.https://doi.org/10.4060/ca9509enをもとに算出
※6【出典】「知ってる?⽇本の⾷料事情」平成27年10月(農林水産省)https://www.maff.go.jp/chushi/jikyu/pdf/shoku_part1.pdf

世界の食品ロスのおもな原因

飢餓で苦しむ人々がいる一方で、国際連合食糧農業機関(FAO)によると生産された食料のうちの約3分の1、まだ食べられる食料が毎年13億トン※7も廃棄されています。食品ロスを減らすことは、食料問題を解決していく上で大きな課題となっています。生産から加工、販売、消費に至るまでの食品流通において先進国と発展途上国では食品ロスの原因にそれぞれ特徴があります。

 

ポイント

先進国

・消費者1人あたりの食料廃棄量が多い

・加工から卸小売、消費者の手に渡るまでにロスが多い

・過剰生産によるロス

・供給時の大量陳列と幅広い生産物・銘柄産品により一部売れる前に販売期限を向かえてしまうことによるロス

・生鮮品に対する高い外観品質基準

・リユース、リサイクルするというより捨てた方が安上がりという意識

・食料を捨てる余裕のある消費者の不十分な購入計画や賞味期限切れ

 

ポイント

発展途上国

消費者段階で捨てられる食料は極めて少ない

・食料ロスの40%以上は収穫後と加工段階で発生

・収穫技術や加工施設、厳しい気候条件での貯蔵と冷却施設、インフラの不備によるロスが多い

・不十分なマーケットシステムによるロス

→適切な貯蔵や販売の条件を提供している卸売・小売施設が極めて少なく、市場は小さく非衛生的で、冷蔵設備がない場合が多い

【出典】©FAO 2011 「世界の食料ロスと食料廃棄 」 http://jaicaf.or.jp/fao/publication/shoseki_2011_1.pdfをもとに作成

 

先進国では、大量生産・大量消費という意識や商習慣を根本的に変えていくことが必要です。そのためには、消費者の食品ロスに対する関心を高める必要もあります。発展途上国では、インフラ整備などマーケットシステムを整えていくことが生産者の生活を守り、生きていくために十分な食べ物を確保していく上でも急務です。世界の食料問題、食品ロスの原因は様々ですが、国際貿易が活発になっている現代では、生産から消費に至るまでの食品流通は、世界全体と繋がっており世界で取り組む問題となっています。

 

 

※7【出典】©FAO 2011 「Global food losses and food waste 」page5 http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/suistainability/pdf/Global_Food_Losses_and_Food_Waste.pdf 

 

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